ゴミ屋敷はどのレベルで強制執行できる?ゴミ屋敷を行政代執行するには費用が必要なの?
最終更新日: 2022/04/20
近年、ゴミ屋敷が深刻な問題となっています。
ゴミ屋敷が及ぼすのは、悪臭や景観を損なうといった問題だけではありません。時には発火し、火事となることも。近隣にお住まいの方にとっては、健康被害や精神衛生、時には命の危機まで感じてしまうほど、この上なく迷惑な存在となっています。
とはいえ、第三者が手を出せない問題であるのが辛いところ。
どうすれば解決へと導くことができるのでしょうか。
その方法について、考えていきたいと思います。
そもそも、ゴミ屋敷はどうやってできる?
ゴミ屋敷の成り立ちは、さまざまです。
いま現在、ゴミ屋敷とは無縁に過ごしている人にとっては、なぜそうなってしまうのか理解することは難しいもの。なぜ、そのような状態になってしまうのか、考えてみましょう。
もったいなくて捨てられない
ご年配の方など、物の少ない時代を生きてきた方にとって、”捨てる”という行為は何物にも代えがたい苦痛となる場合があります。
そのような方が皆、ゴミ屋敷を作り出してしまう訳ではありませんが、”子どものひとり立ち”や”配偶者を亡くす”などがきっかけとなる場合があります。
今はまだゴミ屋敷としてのレベルは低くても、静かにゴミ屋敷化が進んでいるかもしれません。
片付ける時間が無い
残業続きの日常を過ごしている方、家には寝るためだけに帰っている方なども、片付けができず、ゴミ屋敷を作り出しやすい傾向にあります。このような方の場合、片付けや掃除に時間が取れないだけでなく、ゴミ出しの時間に家に居ることすら難しいこともあり、よりゴミ屋敷化が加速しやすい状況となるでしょう。
ただ、このパターンの場合、ゴミが室内に留まっていることが多く、ゴミ屋敷行政代執行の条件を満たしにくいもの。ご自身で費用を用意し、片付けなければならないでしょう。
病気によるもの
精神的な病により、ゴミ屋敷を作り出していることがあります。
”ためこみ症”という病気に罹患している場合には、自力のみで片付けることはほぼ不可能です。誰かしらの手助けが必要でしょう。
また、高齢化や認知症など認知力の低下によっても、ゴミ屋敷を作り出しやすくなります。これは、”捨てる”と”捨てない”の判断ができなくなるためです。
もちろん病にまでは至らずとも、落ち込んでいる時、体力が追い付かない時には片付けまで気が回らなくなるもの。そのような日々が長く続くことにより、ゴミ屋敷を作り出している場合もあります。
病気が原因の場合は、ゴミ屋敷化が異常なレベルに至っていることを本人では理解できないのも辛いところです。
その他
もちろん、ただ単に物が多いという方もおられます。
在庫の管理が甘く、どんどん買い置きが増え、家が物であふれてしまい、どうにもならなくなってしまう方。
一人暮らしで、寂しさを紛らわせるために物を溜め込んでしまう方も。
この場合、指摘する人がいないので、初期段階で食い止めることは困難です。
このように、意外にも、ゴミ屋敷化は身近な存在です。決して、特別な人だけが引き起こしてしまうものではありません。ゴミ屋敷を作ってしまう可能性は、誰にでもあるのです。
ゴミ屋敷を作ってしまう心理状態については、ぜひコチラもお読みください。
ゴミ屋敷には、レベルがあります
ひとくくりにゴミ屋敷と言っても、それにはレベルがあります。
レベルが低ければ、住人の気持ち次第で片付けることは可能ですが、上がってくるほどにやる気が削がれ、不可能となってきます。また、集積所に出せるゴミ量にも限度があり、物理的にも難しくなるでしょう。
以下、ゴミ屋敷のレベルとなっています。
<レベル1>
床全体に、ゴミが散乱している状態。
ゴミの中に大きな物はなく、ゴミ袋に入れて回収できるような物ばかり。
床は見えない。
<レベル2>
足の踏み場がない状態。
ゴミの中に衣類も混ざっており、場所によっては小山ができている。(ひざ下程度)
ここまでが、住人の気持ち次第で片付けることが可能なレベル。
<レベル3>
ゴミの中に粗大ゴミが混ざり、侵入できない箇所ができている状態。
壊れた家具や家電、拾ってきた不要物も混ざりだす。
ほこりやカビによる健康被害、火事の危険性なども出てくるレベル。
<レベル4>
天井付近までゴミが積み上げられた部屋がでてくる状態。
物が腐り、悪臭の発生が起こる。害虫やねずみも発生する。
近隣トラブルが起こり始めるレベル。
<レベル5>
ゴミが室内に収まりきらず、庭やベランダにもあふれ出す状態。
ほとんどの部屋がゴミで埋まり、ゴミ自体も汚れで固まりだす。
ゴミが層となって重量が増してしまい、住居の倒壊も起こるレベル。
<レベル2>までは住人のみで片付けが可能。とはいえ、無理と判断されたなら、躊躇せず、すぐに助けを求めましょう。
迷っている間に、どんどんレベルは上がります。健康被害の可能性、近隣トラブル、住居の倒壊など、先のばしにして良いことは何もありません!
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ゴミ屋敷のゴミは、ゴミではないということ
”ゴミ屋敷”とは呼ばれるものの、そう呼ぶのは第三者のみ。住人にとっては、”ゴミ”という意識はありません。必要なもの、もしくはいつか必要になる予定のものであり、ゴミではないのです。
これはつまり、ゴミ屋敷内にあるすべての物に”所有権”があるということ。もちろん、その所有物を他人がどうこうすることはできず、ましてや勝手に捨てることは不可能です。
多くの人の目にゴミ屋敷と映ったとしても、それは本人次第。他人からどう見えるかは関係ありません。
「迷惑になっている」「危険だ」と言われても、住人には理解することができないのですから、このトラブルはとても根深いと言えるでしょう。
ゴミ屋敷への行政支援はあるのか?
ゴミ屋敷の住人には、片付けたいと思っている人もいます。しかしながら、経済的な困窮から解消に結びつかない場合も多くあるのです。であれば、行政が支援し、解消を目指すのも方法のひとつかもしれません。ゴミ屋敷の放置は、『火災などの二次被害』や『ゴミがゴミを呼んでしまう』こと、そして『近隣住民の流出』など、自治体にとっても決して良いものではないからです。
とはいえ、支援に使われるのは税金。そこには難しい課題が多くあり、ゴミ屋敷解消のための経済的支援にまで至る自治体は非常に少ない状態です。
そのような数少ない中で、支援を行っている自治体が”神戸市”です。
下記条件を満たす住人に限り、最大100万円の支援金受給が可能です。
・周辺に影響を及ぼしている
・経済的に困窮している
・本人に片付けの意向がある
・再発防止策が検討されている
神戸市にお住まいの方で、いつの間にかご自宅がゴミ屋敷のレベルに達してしまったとお困りの方は、一度相談してみるのもいいでしょう。
行政代執行であっても時間を要します
ゴミ屋敷問題の最終手段として、”行政代執行”があります。
これは、国や自治体など行政機関が、命令に従わない方に対して、行政が代行して強制的に業務を執行する措置のこと。あくまで片付け業務を代行するのみとなりますので、片付けにかかる費用については、ゴミ屋敷の住人が負担することとなります。
であれば、「今すぐにでもすべてのゴミ屋敷に対し実施すればいい!」と思うところですが、実はそう簡単にはいきません。
行政代執行に至るには、多くのプロセスが必要です。
・幾度も行われる指導
・幾度も行われる勧告
・片付けを行うよう命令
これらを経てはじめて実施されるのが、行政代執行。本人の同意なしで行える強力な手段であるため、そう簡単に実施できるものではないのです。
本当の意味での最終手段である以上、簡単であってはいけないということなのでしょう。
ゴミ屋敷に関するあらゆる交渉事で大事なことは、役所や自治体に間に入ってもらうこと。トラブルを防ぐため、住人同士での直接交渉は避けましょう。
時間はかかってしまいますが、安全に事を運ぶよう、気をつけたいものです。
まとめ
ゴミ屋敷の存在は見た目に苦痛を感じるだけでなく、安全面での恐怖も付きまとい、近隣住民にとって迷惑な存在であることは確かです。しかし、そこに至るまでの経緯によっては、片付けることが難しい場合もあるということを、心のどこかに留めておく必要はあるのかもしれません。
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